shimoyankee

2022/08/21 19:35

個性ドリブン#6[竹ちょ / 障がい者アーティスト]




しもつかれにインスパイアされたアパレルブランド「SHIMOTSUKARE YANKEE(シモツカレヤンキー)」。

ブランドコンセプトは、しもつかれを「栃木の個性」と定義し、「ローカルで個性を武器に生き抜く人を応援する」です。

本企画は、当ブランドのプロデューサーであり、栃木市のブランディングデザイナー、しもつかれブランド会議(SBM)代表の青栁徹がコラボレーションさせていただいたブランドや人物を「個性」を切り口に紹介。
第6回目は、シモツカレヤンキーの派生ブランド「SHIMOTUKARE NYANKEE(ニャンキー)」のメインキャラクター、猫耳の萌える女の子を描いてくださった栃木市在住の〝障がい者アーティスト〟竹ちょさんです。

 Twitterのフォロワー1.4万人。数々のイラストコンテストで賞に輝く竹ちょさんがADHD(注意欠陥・多動性障がい)と診断されたのは2016年39歳の時でした。以降、〝障がい者アーティスト〟と掲げ、就労継続支援A型事業所にイラストレーターとして勤務しながら益々創作を楽しむ竹ちょさんは言います。
 
「自分らしく生きていて良いんだと楽になりました」

 月1、2回。家から4㎞はある道のりを、自転車を一生懸命こいで「かねふくストア」に行き、しもつかれや手製のお惣菜を買うことが竹ちょさんのルーティン。僕らが出会ったのは、かねふくストアの熊倉さなえさんからの「すごい作家さんがいるの」という紹介がきっかけでした。





認識されない障害の辛さを超えて


青栁(以下、青): 小さい頃から絵を描くことが好きだったのですか

竹ちょ(以下、竹):あ、はい。私は佐野市出身で5歳の時に栃木市に引っ越してきて育ちました。保育園の時からイラストを描くのが大好きで、小学生の時から下野教育美術展、世界児童画展とかで賞をいただいて中学は美術部に。そこでもポスター展とかで賞をいただいていました・・・
 
頭の中の年表を辿るように、竹ちょさんは一言一言、丁寧に、一生懸命に語り続けてくれました。

竹:高校は作新学院美術デザイン科に入学したのですが心の病気になってしまい、しばらくは宇都宮の病院に通院しながら通っていたんですけれど病状が悪化してしまい、残念ながら3年生で退学してしまいました。その後、宇都宮高校の通信制に編入学して高校を卒業しました。
その後地元の会社に就職しました。その時、イラストは完全に趣味で描いていました。アニメ雑誌や少年誌の読者ページにイラストを投稿し続けていました。アニメ誌「アニメージュ」のアニメーターさんが審査するイラストコンテストで一等賞を4回。プロのアニメーターさんに褒めていただいてすごく感激しました。
それで、19年間働いたんですけどその会社が廃業になってしまいまして。で、6年前の2016年にうつ病になってしまいまして、地元のメンタルクリニックを受診したら「発達障害」「ADHD」と診断されたんですね。
小学校の頃からケアレスミスが多かったのでインターネットで調べたら発達障害の情報を見つけて。「自分も当てはまるのでは」とクリニックを受診したら、そういう診断結果に。
その後、2017年にハローワークさん、社会福祉協議会さんの紹介で、就労継続支援A型事業所「アイエヌライン合同会社」という障害者が働いている事業所に入社しました。
最初は他の利用者さんと同じ軽作業をしていたのですが、私がイラストを描くのが大好きなことを知った支援員さんに勧められて、現在、事業所でイラストを描かせていただいています。

青:いろいろ乗り越えて、プロとして活躍されているんですね。
高校性の時のうつ病も、今思えば発達障害が関係していたのですかね。

竹:そうかもしれないですね。当時はまだ発達障害があまり認知されていなかったので私も気付いていなかったですね。なんか周りから「目つきが悪い」とか悪口を言われて自信をなくしちゃって。それで心の病気になっていった感じでしたね。

青:辛かったですね。「もっと早く分かっていれば」というお気持ちもありますよね。診断受けた時はどんな気持ちでしたか。

竹:診断前は全部自分の努力不足と自分を責め続けたんですけれど、診断を受けてからは「自分は悪くないんだ」「頭の障害による特性なんだ」と気付いて心が楽になりましたね。
「自分らしく生きていて良いんだ」と。

青:今、「もしかしてADHDかな」と悩んでいる方も多いですよね。受診してみてほしいですね。

竹:発達障害とか心の病気などで孤立しちゃっている人たちを応援できればなと、私も思います。

青:竹ちょさんの活躍が励みになりますよね。
障がいを公表されて活動されていることは、そういう意図があるということですか。

竹:はい。それで「パラリンアート」という障がい者の創作活動を応援するサイトの「パラリンアートカップ」というスポーツを題材にしたイラストコンペで栃木県賞や去年は日本バスケットボール選手会賞を受賞させていただきました。
あと今年2月ごろにセロテープの「ニチバン」さんとパラリンアートがコラボしたコンペで最優秀賞をいただきました。



心を支えたイラストで「生きる」


「イラストをお見せしていいですか」
ちょっと照れくさそうに受賞作品や賞状を見せてくれた竹ちょさん。ADHDの診断を受ける前の葛藤以外に、中学生の時には火事で自宅を焼失し、2000年にお母様が病に倒れて急逝、2014年にはお父様が心臓の病気で一カ月半入院するなど様々な悲しみ、苦悩を経験しています。

青:小さい時や高校生の時など悩んだ時、絵はどんな存在でしたか。

竹:心の支えでした。自分が自分のままでいられるためのバイブルでした。

青:今は、作業所でお仕事としてイラストも描かれていますね。どんな依頼がありますか。

竹:商品パッケージやキャラクターのデザイン、ポスターに使われるイラストなど。去年は栃木市の人形山車のカレンダーを事業所の皆と分担して描きました。

青: 絵を描くことのどういうところが好きですか。

竹:時間を忘れて夢中になれるところです。
小さい時からイラストレーターになる夢があって高校中退とかで一旦は挫折しそうになったけれど、夢が復活できて事業所の支援員さんには深く感謝しています。

青:診断を受けて、前向きに生きられるようになったのですね。そして、絵を諦めていなかったから。

竹:どんな時も雑誌の読者ページに投稿し続けていたので、どこかで諦めたくないという気持ちが合ったんでしょう。現在はTwitterにもイラストを投稿しています。

青:今後、描いてみたい絵はありますか。

竹:栃木市が好きなので、栃木市ともっと深く関われる仕事をやりたいですね。




コラボは個性の認め合い 悩む人の希望に


青:かねふくストアさんにはいつぐらいから通い始めたのですか。

竹:しもつかれは、すみません、正直苦手だったんですね。
しかし、去年の4月ですね。かねふくさんがBS日テレで「しもつかれがおいしい」ということで絶賛されたのを観てお店に行ってみたら、さなえさんが気さくに話し掛けてくれて。そういう優しい雰囲気も一瞬で好きになりました。
そして食べてみたら、「苦手な酒粕の味があまりしない」と驚きました。大豆、鮭の頭の香ばしさとかが心地良くて、「こんなにおいしかったんだ」と感動してからは病み付きになりました。

青:食レポできますね!表現が豊か! 
しもつかれブランド会議のことはいつ知っていただいたんですか。

竹:去年5月あたりですかね。AKIRAぱいせんさん、青栁さんがご活躍されていることを知って、地元栃木市の潜在的な魅力をポジティブに掘り起こしている素晴らしい団体だなと。そんな中で私も掘り起こしていただいて感謝が絶えません。
コラボのオファーがあった時は舞い上がってしまうほどうれしかったです・

青:こちらこそうれしいです!


「NYANKEE」という響きがかわいく、「個性」を象徴する既存の尖った感じに今までと異なるかわいらしいテイストを入れてみたいと始まった企画。竹ちょさんは、オファー後すぐに想像を超えたハイクオリティーな〝萌える〟猫耳の女の子を描いてくれました。

青:どんな点にポイントを置きましたか。

竹:しもつかれが大好きでおいしそうな表情ですね。「どうぞ、食べて」という自信満々な感じも。

青:AKIRAぱいせんの決めポーズ小指を立てる仕掛けにも応えてくれましたね。すごくかわいいです。

竹:うれしいです。

青: 今後の夢はありますか。

竹:個展を開きたいですね。

青:いいですね!かねふくさんとか複数の会場で開いてもいいかも。

竹:はい。かねふくさんに贈ったイラストを目当てに県外からお店に来てくれた方もいるそうです。感激しました。

青:人を呼べるなんて栃木市の宝ですよ!観光大使ですよ。

竹:創作活動を通じて私たち障がい者の社会参加がもっと促進されるとうれしいです。
そして、私が描いたイラストを通じて、もっとより多くの方々にしもつかれに興味を持ってもらえたらうれしいです。栃木県が誇る、100年フードにも認定された郷土料理です。ずっと引き継がれていくことを願ってやみません。しもつかれは隠れた魅力が溢れていて、いろんな可能性を引き出せる素晴らしい食べ物だと思っています。

青:人もそうですよね。中身を知れば知るほど実は奥深くて魅力いっぱいだったという時も多々ある。

竹:はい。もっと様々な角度から見てほしいです。

青:自分の見識の範囲内で判断せず、本質を知ってから判断してほしいですよね。障がいをお持ちの方、悩んでいる方のすごい励みにもなると思います。そして、しもつかれを知っていただく機会も増えると思うのですごくうれしいです。そういった意味でも互いの個性を掘り出し合う良いコラボになりましたね。本当にありがとうございます。



Information:
竹ちょ / 障がい者アーティスト / イラストレーター
障害者就労事業所に勤務。ADHD(注意欠如・多動性障害)・うつ病と診断。萌えキャラ・アニメキャラを描く

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